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ありがちな、ただの恋
第1章 ありがちな、ただの恋
 我に返ったように、響花はメソメソと泣き出した。小さな声で、ごめんなさいと繰り返している。

 そうこうしているうちに、やっと駅に着いた。エスカレーターを登ってホームに着いたとたん、僕と響花が乗るべき終電車が滑り込んできた。

 響花の親友と別れ、ふたりで電車に乗る。電車は空いていた。響花をシートに座らせて僕も隣に座る。

 彼女はすぐに寝てしまった。僕の肩に頭を乗せ、気持ち良さそうな寝息を立てている。

 彼女の髪が僕の頬をくすぐり、僕は彼女の肩に腕を回して支える。と、彼女が小さな声で何か言った。

「なに?」

 耳を寄せると響花は顔を上げ、

「好きよ」

 たった一言だけ。また寝てしまった。

 ただの寝言だ。寝言に決まってる。僕は眠りに落ちた響花へ優しく話しかける。

「おやすみ。かわいい人。僕がそばにいるからね」



 𝑭𝒊𝒏
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