この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
~疼き~
第3章 前日の事
蒼はというと、朝起きると夏海の姿が無かった。
「夏海の奴、まだ怒ってるのか…」
そう呟くと、冷蔵庫を開けてベーコンに卵を取り出した。
ベーコンをカリカリに焼きその上に生卵を落としてベーコンエッグを作った。
厚切り食パンを袋から1枚出すとそれをトースターで焼いた。
ケトルで湯を沸かし、ドリップ珈琲を淹れる。
それを飲みながらパンにかぶりついた。
蒼はひとり暮らしが長かったせいか、料理はとても得意だった。
夏海が居なくても自分の食べるものは自分でちゃんと作れたのだ。
その後、スーツに着替えると鞄を持ちアパートを出た。
電車はいつものように大混雑で、もみくちゃにされながら蒼は三田の駅に着いた。
「連休明けはマジで身体がだりぃ…」
そう、呟くと会社のあるビルまで歩いてゆく。
そして、あの事故にあう。
夏海はあの日の事を思い出していた。
まさか、あの朝が最後の日になるとは思ってもみなかった。
何故、あんなにあの時自分は怒っていたのだろう。
何故、蒼を許さなかったのだろう。
そう思うと泪が出て、止まらなくなっていた。
夏海は蒼の笑顔の写真の前で泪が枯れるまで泣いた。
心が疼くのをこの時感じていたのだ。
部屋には西日が入ってきてとても暑さを感じた夏海だった。