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青い欲情~男と女の色模様~
第13章 家庭教師
さて、家庭教師の時間が終わり
沙織が帰ろうとする時間を見計らったように
突然に雨が降り始めた。
「木村先生、僕の傘を貸してあげるよ」
「バカね、傘じゃ足元が濡れるわよ」
母の清美が言うように
かなりの雨足だった。
「ね、あなた、先生を車で送ってさしあげてよ」
「そうだな、俺の大事な部下に風邪でもひかれちゃ困るしな」
いつもはソファにふんぞり返って
何を言ってもすぐに動かないのに
この夜だけはスッと立ち上がって車のキーを取り出した。
「すいません…じゃあ、駅までお願いできますか?」
「そんな遠慮なんかするなよ
駅と言わずに自宅まで送っていくよ」
「そうよ、冬の雨は冷たいんだから
夫の気持ちが変わらないうちに送ってもらいなさい」
家に居られると、やれ、酒を出せだの、つまみを作れだの、いろいろ面倒くさいから清美としては春彦を追い出したくて仕方なかった。
「え…でも…」
「わかった。親父の運転が下手くそだから乗りたくないんだ!ね、そうでしょ」
僕がツッコミを入れると
春彦はかえって意固地になって
何がなんでも送っていくと言いだした。
「それじゃあ…お言葉に甘えていいですか?」
「もちろんだとも!さあ、行こうか」
親父…何だか楽しそうだな…
本当は僕が送って行きたいところだが
運転免許がないから
ここは親父に花を持たせてやるかと
玄関を出ていく二人を僕は見送った。