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ガトーフレーズ
第5章 crêpe sucrée
肌寒さにふと目を開けると、体にまとわりつくような雨が降っていた。莉乃も眠ってしまっていたらしい。

「俊太! 俊太起きて」

慌てて俊太の手を引っ張って、あずまやの屋根の下へ走りこむ。

「濡れちゃったね」

ハンカチで俊太の顔を拭いてあげると、照れたような怒ったような顔で学ランを羽織らされた。

「莉乃さん、透けてます……」

「きゃっ、やだ」

ぺったりと貼りついたワイシャツから、水色の下着が透けていた。

「……乾くまで、どこも行かないから」

俊太は、ぶっきらぼうにそう言った。

「ふふ。俊太って、結構独占欲が強いんだね……嬉しいっ」

からかうように言って腕に抱きつくと、「ちげーし……」と小さな声が聞こえた。

(幸せ……だな……)

少しだけ耳の赤い、綺麗な横顔を見つめる。
全然こっちを見なくなった俊太は、抱きついた腕だけはずっとそのまま動かさずにいてくれた。
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