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第1章 百合子

私は見てしまった。

お見合いをして、結婚すると決めた広長さんが、恋人とキスしているところを。


父が経営する病院で、外科医をしている広長さん。

30歳を超えても結婚する気はないと知って、お父さんは二十歳になった私とお見合いさせた。

話はとんとん拍子に進んで、私と広長さんは結婚する事になった。


「広長さん。」

時間を見ては、広長さんが勤めている外科に足を運ぶ。

「百合子ちゃん。」

広長さんも、私が来ると嬉しそうで、他愛のない話に花を咲かせる。

「私達、春が来たら結婚するのよね。」

「うん。」

笑顔が素敵な広長さん。

私はこの笑顔に、恋をした。

二十歳になって、人生初めての恋。