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ビッケ
第1章 ビッケ…
 ⑭

 ビッケ…

 ビッケ、それは…

 わたしが中学三年生まで飼っていた、いや、生きていた…
 ペットのミニチュアダックスの名前である。

 ビッケ…

 ああ、あのビッケの目に似ているんだわ…

 そう、この、今、愛おしいと思って頭を撫でている和哉くんの目が…

 初めて会って、顔を、目を見た瞬間からずうっと心に引っかかってきていたあの彼の目は…

 昔飼っていた、大好きだった、愛おしかった…
ペットのビッケの目と同じ光りをしていたのだ。

 膝の上に乗せて、喉元からお腹の辺りを優しく撫でるとうっとりと鼻を鳴らしていたあのビッケの愉悦の目に…

 そっくり、いや、同じ目なんだ。

 だから最初に心に引っかかってきたのか…

「和哉くん…」
 わたしは頭を撫でながら呟いた。

「あ、はい…」

 ああ、そう、この目だわ…

「ねぇ…」

「え?」

「ううん…」

 ヤバかった、あと少しでつい…
『わたしのこと好き?』
 なんて迂闊な言葉を囁きそうになってしまった…

 わたしより9歳年下の和哉くん…

「ねぇ、また出来るでしょ?」

「はい」

「もう出来る?」

「はい」
 すると和哉くんはそう応え、わたしを抱いてくる。

「あ…」
 そして、あの…
 ビッケそのものの目でわたしを見つめてきた。

 あぁ、ビッケだぁ…

「あと…二回以上…出来ます…」
 そう呟きながらキスをしてくる。

「あ…」

 和哉くん…

 ビッケ…
 
 そして…

 ペット…

 禁断の、いや、昂ぶる想いが湧いてきた…




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