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A crescent moon
第9章 世界

ぱくっと食べると、うれしそうに頭を撫でる。

撫でてくれる。

「おいしい?ちょっと失敗しちゃってさ。焦げちゃった。」

「…」

小さく頷いて、口の中でちょっとこげた味の魚を咀嚼する。

味があるのかないのか良く分からない。

甘いものが食べたい。

ドーナツが食べたい。

お母さん。

すべて出されるまま食べ、最後を飲み込んで私は正弘さんを見た。

「なに?美和、さみしかった?しゃべって?」

「………ドーナツ…」

「ドーナツ?食べたいの?」

「ドーナツ…お母さん…ドーナツ…」

涙が出てくる。
枯れたはずの涙がぽろぽろこぼれて、彼が驚いたように立ち上がった。

「買ってくるよ。ミ〇ドでいい?」

「…」

応えずにその場に寝転んだ。

(違う。お母さんのが食べたい…)

でも我侭言うなって、怒られるに決まってる。
また殴られる。
あざができる。
痛いのはいや。
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