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A crescent moon
第9章 世界
あと2つ。
いつの間にか入ってきていた男が、カレンダーを見て微笑んだ。
勝手に入ってきたんだ。
私と正弘さんのおうちに。
「ちょっと出てくるね。買い物行くだけだし、30分くらいで戻るから。」
「…」
私は身体を起こさず男に目を向けた。
困ったように顔をしかめる。
「美和、わかってる?」
男は戸惑ったように私を見てからもう一度言った。
「買い物行くから。ね。早く帰ってくる。」
「…」
目の前の男が何か言ってる。
聞こえない。
分からない。
受け付けたくないと頭の中で誰かが叫んでる。
ガチャっと音がして玄関の扉が開くと、部屋に静けさが降りてきた。
私はおもむろに立ち上がり、部屋をゆっくり見渡した。
身体が重い。
筋力がなくなっているのか、足を一歩出すのもしんどい。
トイレを見て、廊下を見て、キッチンに来た。