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A crescent moon
第11章 愛愛
「可哀想にね~。」
「育ててくれたお父さままで亡くなって、お母さま自殺ですって。」
「大学まで出してくれてみたいよ。」
「まぁ有名な会社勤めでお給料もよろしいんでしょ?」
「ご兄弟も親戚もいらっしゃらないみたい。」
「良いところに引き取られたものね..」
「こらっ」
「あら失礼。」


俺は葬儀で何度もそんな陰口を聞いて、いい加減うんざりしていた。

先日、母親が自殺した。
大学を出たばかりで、ようやく会社にも慣れてきていた俺は突然の訃報に、なんとなく、やっぱりな、という思いを抱えながら実家に帰ってきた。

父親は俺の大学入学と同時に心臓の病に倒れ、そのまま死んだ。
普段は大人しいヒトだったけど
酒を飲めば人が変わり、
暴力は何度も受けた。
が、俺は育ててくれていた彼に感謝していた。


生まれてすぐ実の母親に施設の前に捨てられた時、添えてあった手紙に息子の名前と、父親が生まれる前に死んだこと、施設で育ててくれということが書いてあった。

そして15の春。

俺は佐々木正弘として、ある夫婦の息子として迎えられた。

仲の良い二人には子供ができず、俺は本当に可愛がられていたと思う。
けど、お養父さんは嫉妬深い人だったのか、酒が入ったときに、お養母さんが俺にかまいすぎていると殴られた。

気にしていなかった。
仲が良いものは仕方がない。
俺は余所者だし、育ててくれるだけでありがたかった。
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