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A crescent moon
第11章 愛愛

「無意識なのか意識的なのか。毎日これを書かせたんだろうよ。」

男は首を傾げる新人に手渡し部屋を見渡した。

二人の写真で溢れる、綺麗な部屋だ。

「彼女をすべてコントロールしたくてそうさせたのか、無意識にそうさせたかったのか、わからんが。」

少なくとも、松方美和のあの取り乱した様子と軟禁状態にあったこと、そして暴力された跡がほとんど消えかかっていることから最後は抵抗していなかったんだとわかる。

毎日毎日二人だけの生活、愛してるという言葉の刷り込み、そして…

(有る意味でのストックホルム症候群か。)

「ほんと結婚前に悲惨ですよね。恋愛が怖いっすよ。」

へらへらする新人を横目に、男はふっと笑った。

「女はいないのか?」

「いますけど、僕は暴力なんて振るいませんし。」

的外れな答えに呆れる。

部屋を出る前にもう一度振り返って、刑事は小さく呟いた。

「彼女は…立ち直れるのか?お前、先に死んじまってそれで良かったのか?」

誰もいない部屋に、刑事の呟きだけが響いたー
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