この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
A crescent moon
第14章 進退
男性との会話は聞こえない。
けれど、空気はそんなによろしくないのはわかる。
ヨシキが何度か頭を下げると、男性は踵を返して去っていった。
ヨシキが頭を上げ、まだ見つめる私の方に向かってくる。
「…美和、ブーケ貰ったんだ?」
サングラスの向こうではどんな顔をしているのか、小さく笑みを浮かべているせいで余計にわからない。
「良子が…ねぇ、今のひとー」
誰かと尋ねようとしたとき、隣で同僚たちが歓声をあげた。
「よ、ヨシキじゃないっ!?」
「う、うそっヨシキ?!」
「ちょっと美和!どゆこと!?」
騒ぎ始めた彼女たちをヨシキは振り返ると、唇に人差し指を当てた。
「友人の大事な結婚式なんです、今日は控えていただけますか?」