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乳房星(たらちねぼし)−1・0
第43章 あゝ無情
「ゆき!!」
「なんやねん〜」
「なんやねんじゃないでしょあんたは!!」
「哲人《てつと》はわざとうちらに結婚のあいさつをしなかったのじゃないのよ…」
「いいわけ言われん!!」
「ほなどないせえ言うねん…うちはその時、おとーちゃんたちと一緒に海外のあちらこちらを旅していたのよ〜」
「ゆき!!」
「なんやねん〜」
「哲人《てつと》がカノジョの両親にあいさつに行ったのは今年の1月末頃よ!!」
「その時は、鳥取の私立高校《コーコー》にいたけど、3年生の生徒さんたちの卒業後の進路のことなどで頭がいっぱいになっていたのよ!!」
「ゆき!!」

この時、ゆきさんのとなりに座っていたゆいさんが泣きそうな声でいとに言うた。

「おかーちゃん!!ごはん食べている時にガーガーおらばないでよ!!」
「分かってるわよゆい!!だけど、おかーちゃんは哲人《てつと》とカノジョが結婚したことが気に入らないから怒ってるのよ!!」
「ほなおかーちゃんは哲人《てつと》になにを求めているのよ!?」
「おかーちゃんは、哲人《てつと》のねぼけた性格を治したいのよ!!」
「おかーちゃん!!うちらは明日以降もお仕事の予定があるのよ!!うちらははよ寝たいのよ!!」
「分かってるわよ…せやけどおかーちゃんはあせっているのよ!!」

それを聞いたゆみさんは、怒った声でいとに言うた。

「おかーちゃん!!少しは冷静になってよ!!」
「分かってるわよ〜」
「おかーちゃんは哲人《てつと》にどないしてほしいのよ!?」
「おかーちゃんは、哲人《てつと》がわけのわからない研究で表彰されたことが気に入らないから大学をやめてほしいのよ!!」
「おかーちゃんがガーガーガーガー言い続けたら哲人《てつと》がイシュクするわよ!!」
「なにいよんで!!哲人《てつと》は『ぼくのリロンは完ぺきだ…』と言うて思い上がっているのよ!!」
「おかーちゃんは、哲人《てつと》にどないせえと言いたいねん!?」
「大学やめて、堺市役所《しやくしょ》に就職してほしいのよ!!」

見かねた大番頭《おおばんと》はんが、つらそうな声で言うた。

「いと!!晩ごはん食べている時にガーガーおらぶな!!しんどいねんもう〜」

大番頭《おおばんと》はんは、白ごはんが盛られていた砥部焼きのお茶わんを差し出しながらお代わりをもとめた。
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