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乳房星(たらちねぼし)−1・0
第45章 憎みきれないろくでなし
「あんた。」
「ゆき。」
「ここになにしに来たのよ!?」
「おれは、日帰りの出張で来たのだよ~」
「(ゆきさん、めんどくさい声で言う)日帰りの出張〜」
「うん…少し時間があるからここに立ち寄った。」
「あっ、そう〜」

ゆきさんは、デスクの上に置かれていた黒のサーモスのタンブラーを手にしたあと、中に入っている麦茶をひとくちのんだ。

麦茶をひとくちのんだゆきさんは、タンブラーのフタを閉じながら明憲《ムコハン》に言うた。

「話かわるけど、哲人《てつと》はどうしてるのよ?」
「どうしてるって…いつも通りに大学の研究所にいるよ…」

明憲《ムコハン》が言うた言葉に対して、ゆきさんはものすごくあつかましい声で言うた。

「あの子は浮き世のせちがらさをなめているわよ!!」
「えっ?」
「(ものすごく怒った声で言う)あの子は浮き世のせちがらさをなめている…と言うたのよ!!」
「なんで?」
「哲人《てつと》が大学でどんな研究をしていたのかは知らへんけど、あの子はえらそうな顔をしているわよ!!」
「ゆき…哲人《てつと》は大学の研究所の主任なんだよ…」
「主任だからなんじゃあ言うのよ!!」
「ゆき、なにを怒っているのだよ〜」
「あの子は、誰のおかげで京都の大学に行くことができたのかを分かっていないのよ!!」
「哲人《てつと》は子供じゃないのだよ〜」
「哲人《てつと》が何歳《なんぼ》であろうと、まだ子供よ!!」
「子供…」
「そうよ!!あの子は、『ぼくのリロンはカンペキだ!!』と言うて思い上がっているのよ!!」

ゆきさんは、再びサーモスのタンブラーを手にしたあとフタをあけて麦茶をごくごくとのみほした。

(パチ…コト…)

ゆきさんは、タンブラーのフタをしめたあとデスクの上に置いた。

明憲《ムコハン》は、困った表情でゆきさんに言うた。

「ゆき。」
「なんやねん!!」
「哲人《てつと》と(カノジョ)さんの婚姻届はどうするのだ?」
「またその話!!」
「ゆき。」
「あなたは哲人《てつと》を幸せにしてあげたいと思うけど、君波《うち》の親族一同は、いかなる形であっても哲人《てつと》が結婚することには猛反対よ!!」
「なんで反対するのだよ〜」
「はぐいたらしいムコね!!反対と言うたら反対よ!!」
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