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乳房星(たらちねぼし)−1・0
第45章 憎みきれないろくでなし
「あんたは、恋愛と結婚は一緒だと言うたわね!!」
「言うてないよ〜」
「ほな、あんたはなんでうちと再婚して君波《うち》のイリムコになったのよ!!」
「なんでって…」
「あんた、ほんとうは恋愛結婚がしたかったのでしょ!!」
「したかったけど…近くに相手がいなかった…」
「なさけないわね!!」
「小学生〜中学生までの同い年の女の子たちは…みーんな冷たい女ばかりだったからできなかった!!」
「悪かったわね!!うちかて冷たい女よ!!…それよりもあんた!!」
「何だよ~」
「あんたは、出張でここに来たのでしょ!!」
「来たけど…こわいのだよ〜」
「こわい…なにが怖いねん!?」
「得意先にあやまりに行くのが怖いねん~」
「なさけないわね!!」
「部下が勝手なことをしたことが原因で…得意先に大損害が出たのだよ…」
「ほんならはやくわびに行きなさいよ!!」
「行きたいけど…怖いねん…」
「ますますはぐいたらしいわね!!甘えるんじゃないわよドアホ!!」
「ほんとうにこわいのだよ…」
「あんたはなにが怖いのよ!!」
「取り引きをうしなうのがこわいのだよ〜」
「せやけんうちはあんたが大キライなのよ!!もうドサイアクだわ!!」

ゆきさんは、ものすごく鋭い目つきで明憲《ムコハン》をにらみながら言うた。

「うちかてひとのことが言えた義理じゃないわよ…せやけど、うちは悪いなりにここまで生きてきたのよ!!」
「ゆき…」
「うちかて、恋愛結婚《けっこん》で大失敗したわよ!!甲南山手《こうべ》の女子大に通っていた時に知人の紹介であんた以上にドサイアクなチャラ男《お》と知り合って…その勢いで結婚を決めた…おとーちゃんとおかーちゃんとゆりねーちゃんたちの猛反対を押し切って…カレと一緒に戸畑《きたきゅうしゅう》へ逃げた…そこでカレと結婚生活をした…けど…最初に生まれた娘を殺された…うちもコンクリ詰めに遭いそうになった…そないなったのは、あのクソチャラ男の交友関係が劇悪だったからよ!!」
「ゆき。」

ゆきさんの両目が真っ赤に染まっていた。

真っ赤に染まった両目から血の涙が大量に溢れ出た。

ゆきさんは、声を震わせながら明憲《ムコハン》に言うた。
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