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乳房星(たらちねぼし)−1・0
第213章 春雨
「うちは、東京の国民学校の小学校3年生のときに…クラスの子たちと一緒に集団疎開《ソカイ》したのよ…」
「ソカイ…」
「(東広島の)西条へ集団疎開《ソカイ》したのよ!!…だけど…男の子たちは畑仕事…女の子たちは、グンプクを作るお仕事をさせられた…勉強することができなかったのよ!!…お友だちと楽しい時間を過ごすことができなかったのよ!!…それなのにあんたはなによ!!」
「楽しい時間って、なんでしょうか?」
「夏休み冬休み春休み…修学旅行・遠足・体育祭・文化祭・ゼミの発表会…土曜日半休《ハンドン》・日曜祝日休み…お友だちとショッピングに行く…ができなかったのよ!!」
「ですから、私にどうしろと言いたいのですが?」
「うちはそれができなかったから怒っているのよ!!」

それがどうしたと言いたいのか?

私は、ものすごくいらついた表情でつぶやいた。

ひろこねえさんは、ますます怒った声で私に言うた。

「あんた!!」
「はい?」
「うちはほんとうに親もとからガッコーに通うことができなかったのよ!!聞いてるの!?」
「ですから、集団疎開《ソカイ》でよその土地にいたからでしょ…」
「そうよ!!…うちの母親と幼いきょうだいは広島中区《ひろしま》で暮らしている親類の家に疎開した…けれど…原爆投下《ピカドン》で亡くなった…父は、抑留先の収容所で亡くなった…姉は…開拓団の人と結婚して満州に渡ったけど…ソ連兵に連れ去られた…そう言うつらいことがあったのよ…だから、コーコーへ行くことができなかったのよ…」

なんだよ…

そう言えばよかったじゃないか…

私は、ヒョウシ抜けした表情でつぶやいた。

ひろこねえさんは、にえきらない表情で私に言うた。

「そう言うあんたはなによ!?」

私は、しんどい表情でひろこねえさんに言うた。

「ひろこねえさん…この辺で終わらせましょう…もう…いいですよ〜」

私に言われたひろこねえさんは、カチンと来た表情で立ち去った。

なんだよ…

ひろこねえさんがグダグダグダグダ言うから、こっちは頭に来てるのだよ…

おんまく腹立つワ!!

私は、ものすごく怒った表情つぶやいた。
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