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乳房星(たらちねぼし)−1・0
第217章 雲にのりたい・その2
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)

時は、夜8時頃であった。

私は、JR下関駅から鹿児島本線の各駅停車《どんこう》〜特急にちりん号に乗って再び旅に出た。

夜10時過ぎに、特急列車《れっしゃ》が別府駅に到着した。

韓国へ行くことをあきらめた私は、道後温泉《どうご》にいるドナ姐《ねえ》はんに会いに行くことにした。

今、私が頼ることができるのはドナ姐《ねえ》さんだけだ…

ドナ姐《ねえ》はんに会いに行こう…

大番頭《おおばんと》はんたちを知っているのはドナ姐《ねえ》はんだけだ…

急ごう…

(ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ…)

時は、深夜11時55分頃であった。

私が乗り込んだ宇和島運輸フェリーが大きな汽笛をあげながら別府国際観光港から出航《しゅっこう》した。

船内の二等客室にて…

ひざに毛布をかけた状態で座っている私は、ウォークマンで歌を聴いていた。

イヤホンから黛ジュンさんの歌で『雲にのりたい』が流れていた。

もちろん、テープを巻き戻して繰り返し聴いていた。

何度聴いても、涙がポロポロポロポロあふれ出る…

歌を聴いている私は、ひざをまるめた状態で泣いた。

「ううううううううううううううううううううううううううう…ひとりで生きて行けない…お嫁さんがいないと…生きて行けない…ううううううううううううううううううううう…好きなコが近くにいないから…悲しい…」

私は八幡浜港《やわたはま》に着くまでの間、ずっと泣いていた。

ウォークマンの透明の窓に大つぶの涙がたくさんこぼれて落ちた。

テープのシールに記入されている『黛ジュン・全曲集』の字が涙でぼやけていた。

時は2018年12月22日夕方5時半頃であった。

フレンチリバーの特大豪邸にて…

テーブルの上に置かれているエクスペリアのウォークマンの保護フィルムの上に大つぶの涙がたくさん落ちていた。

画面に映っている長山洋子さんのシングルジャケットの写真と『雲にのりたい・長山洋子』の表示が涙でぼやけて映っていた。

深眠《ねむり》についている私の目から大量の涙があふれていた。

この時であった。

リチャードさんとシャノンさん夫婦とリチャードさんの実家の親類の男の子とカノジョ(19歳同士)が特大広間に入った。
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