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乳房星(たらちねぼし)−1・0
第235章 いい日旅立ち
10月23日から29日までの間、私は一睡もせずにドナ姐《ねえ》はんを探し回った。

水俣市《みなまた》を出発したあと、阿久根〜出水市《いずみ》〜薩摩川内《せんだい》〜市来串木野《くしきの》〜知覧《ちらん》〜日置市《ひおき》〜鹿児島〜指宿〜枕崎市《まくらざき》〜鹿屋〜肝付《きもつき》〜志布志《しぶし》……

…と探し回った。

しかし、ドナ姐《ねえ》はんはどこにもいなかった。

そうこうして行くうちに『私は、こんなところでなにをやっているのだ?』と思うようになった。

同時に、私の中で限界を感じるようになった。

もうだめだ…

バンサクつきた…

(ザザーン、ザザーン、ザザーン、ザザーン…)

時は、10月31日の午後12時半頃であった。

ところ変わって、大隅半島の先端にある佐多岬にて…

私は、ぼんやりとした表情であれ模様の海を見つめていた。

あれ模様の海の上をしろいカモメたちがたくさん飛んでいた。

海を見つめている私は、谷村新司さんの作詞作曲の歌で『いい日旅立ち』を歌った。

一通り歌った私は、震える声で泣いた。

「ううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう…」

悲しい…

おんまく悲しい…

お嫁さんがほしい…

お嫁さんがいないと…

生きて行くことができない…

私は、海を見つめながら20分間泣いた。

時は、午後3時過ぎであった。

ショルダーバッグを持っている私は、遊歩道をトボトボと歩いていた。

この時であった。

通りすがりの風来坊の男が私に声をかけた。

風来坊の男は、ドナ姐《ねえ》はんが福岡に滞在していると私に伝えた。

風来坊の男から話を聞いた私は、福岡へ行くことを決めた。

(ゴーッ…)

時は、夜8時半頃であった。

私は、宮崎ブーゲンビリア空港から全日空の最終便に乗って福岡へ向かった。

機内にて…

私は、ひどくソワソワした様子で左腕につけているカシオのデジタルウォッチを見た。

時計は、20時33分と表示されていた。

あと15分で飛行機が福岡空港に到着する…

急げ…

とにかく急がなきゃ…

時間がない…
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