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乳房星(たらちねぼし)−1・0
第19章 かあさんの子守唄
「きょうこちゃん!!」
「なによぅ〜」
「きょうこちゃんは、あれみてなんとも思わないの!?」
「なんとも思わないのって?」
「テレビの画面に映っている男性がよーくんだったらどうするの!?」
「えっ?」

友人のコは、のみかけのビールをごくごくとのみほしたあと怒った声でママに言うた。

「きょうこちゃんは、よーくんがママに会いたいと言うてもよーくんの求めには一切応じないのね!!」
「なんで怒っているのよ~」
「もうすぐあれが始まるわよ!!」
「あれって?」
「テレビを見なさいよ!!」

このあと、涙のご対面が始まる予定であった。

司会の桂小金治さんが『お母さまどうぞ!!』と叫んだ。

右の登場口のカーテンがひらいたと同時に、童謡『かあさんの歌』が流れた。

(母親以外のご対面の時の曲は『赤とんぼ』である)

同時に、男性の秘密さんが会いたかったお母さまがステージにいる秘密さんのもとに行った。

再会を果たした母子は、ワーワーと泣いていた。

テレビを見ているママは、ぼんやりとした表情を浮かべながら『なんなの?』とつぶやいた。

またところ変わって、店舗のトイレにて…

(ブクブク…バシャ!!)

ママは、洗面所の流しに水をためた状態で顔を水につけていた。

たまっている水から顔をあげた時に、水が勢いよく散った。

鏡に写っているママの顔がびちょびちょに濡れていた。

ぼんやりとした表情を浮かべているママは、考え事をしていた。

そんな時であった。

(ガチャ…)

トイレの中に、トレンチコートを着た刑事たち10人がママのもとにやって来た。

この時、捜査一課長のワッペンをつけた刑事がママに声をかけた。

「お取り込み中のところすみませんけれど…」
「えっ?」
「愛媛県警の松山東警察署《ひがししょ》ですが…8月19日の夜遅くに発生したホステス殺人事件のことで…任意の事情聴取に応じていただけますか?」
「えええー!!」

刑事たちから任意の事情聴取に応じるようにと言われたママは、すっとんきょうな声をあげた。

なんで…

なんでアタシがケーサツに行かなきゃいかんのよ…

助けて…

よーくん助けて…

よーくん助けて!!
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