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鼓膜から流れ込む愛
第1章 出会いと告白
(今日も疲れたなぁ…)

重い足取りで人気のない道を歩く。

したくもない残業をし、家に着く頃には11時過ぎ。

毎日上から降ってくる仕事を片付け、気分屋な上司の機嫌を取る。

なんの為に仕事をしているのか、生きる意味とは…

そんなことを考え始め、頭の中がグルグルしていた時、視界の端に暖かなオレンジのライトが見えた。

そこはお店のようで、看板には『Lento』と書かれている。

(この時間に営業しているということはBARか何かなのかな…)

最近できたのか、はたまた今まで気づいていなかったのか。

なんにせよ自分には縁のない場所だろう。

お酒は好きだが、それは家で飲む場合に限る。

家だったら酔いつぶれてもすぐ寝れるし、すっぴん・眼鏡・ダル着の三拍子でも許される。

わざわざ身なりを整え、周りの目を気にしながらお淑やかにお酒を飲むなんて、そんなの飲んだ気にならない。

そう思いながら、コンビニで缶チューハイを買って帰ろうか考え、通り過ぎようとすると、

カランカランと子気味いい音がなり、お店の扉が開いた。

その音に反応し、お店のほうを見ると、中からバーテン服を着たガタイの良い男性が出てきた。

その男性は私を認識すると「こんばんは」と低く心地の良い声で声をかけてくれた。

私はその声に惚れるしかなかった。

そう、何を隠そう私は生粋の声フェチなのである。

「あっ、えっと、こんばんは」

キョドりながら返事をするが、明らかに挙動不審である。

(何をやってるんだ私は!こんなところでコミュ障を発揮してどうする!)

何とかしてこの男性の声をもっと聴きたい。

だが次にかける言葉が見つからない。

ここはお店なのだから、このまま入ればいいだけの話。

だがその発想に至らず、私の口から咄嗟に出た言葉は…
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