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鼓膜から流れ込む愛
第1章 出会いと告白
「本当に…通報されてもおかしく無かったですよね…ハハハ…」

私は目を逸らしながら苦笑いを浮かべる。

「そんなことないですよ。確かにびっくりはしましたけど…。そこまで褒められると悪い気はしませんし」

「褒めてるのには間違いないんですけど、純粋に褒めてるかと言われると…好みというか…なんというか…」

まさか自分の性癖にドストライクとは言えまい。

「自分の声あまり好きではなかったので、私は純粋に嬉しいですよ」

「そんなにいい声なのに?」

「いい声なのかはわかりませんが…声が低いと聞こえにくいそうで、友人と話していても聞き返される事が何回もありますし、居酒屋とか賑やかな場所だと全く気付いてもらえませんし」

「あぁ…なるほど…」

声が良くても良いことばかりではないという事実に驚きつつも妙に納得した。

「なのでとても嬉しいですよ。ありがとうございます」

お礼のあとに私の名前を呼ばれる。

(その声で名前を呼ばれるのは…ヤバい…)

店内にはジャズらしき音楽も流れているのに、私の耳には片平さんの声しか聞こえない。

(これはしばらく通うことになりそうだな…)

自分の心臓と財布の心配をしながらも、逃げられそうにないことを確信した。

「恋心は怖いですね…」

「ん?どうしました?」

ボソッと呟いた一言に「なんでもないです」と付け加え、私たちは雑談を続けた。
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