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拓也と菜津美
第1章 不安(拓也)
(今日はどうしたのかな?早く来ないと電車が来ちゃうよ…
拓也はプラットホームに、その人影を探していた。

…★…★…★…★…★…

都内の、いわゆる進学校に拓也は通っている。
難関入試をクリアし、制服のグレーのブレザーに初めて袖をとおした時、拓也はバラ色の高校生活を確信した…
はずだったのだが…
朝早く起き、電車にゆられ学校へ行く。
眠気と闘いながら授業のノートをとる。
家へ帰っても、好きなオンラインゲームは封印し勉強する。

毎日…毎日…毎日…

男子校なので、彼女なんてできるはずもない。高二になっても、もちろん童貞だ。
スポーツは嫌いではなかった。
中学時代は、剣道に打ち込み主将まで務めた。
高校での部活はどうしようか?と迷ったが…
結局、勉学一本に打ち込もうと決めどこの部にも入らなかった。

(やっぱり、どこかに入部すればよかったな…)

汗だくになりながら、ひたすらバットを振っている学友たちを横目に見ながら、拓也は帰宅の道を急ぐ…

そんな毎日を一年以上続けるうちに、入学当初描いていた高校生活のイメージカラーは、いつしかバラ色から、毎日着ている制服のような灰色に変色していた。
そんな砂を噛むような日々のなか、唯一の楽しみは毎朝の通学電車だった。
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