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梨果サイドストーリー
第1章 ヌードモデルになった日
とにかく退屈な日々だった。

私は音楽の道に進もうと隣町にある音大の付属中学へ通ってる。
スポーツもそこそこ好きでバドミントン部にも所属していて退屈する暇はないはずなんだけど、繰り返す代り映えない日々が退屈だった。

夏休みというのもあってボーッと過ごす日々が続いてた。
暇があるといろいろな事を考えてしまい、この頃はあまり人に言えない妄想をしていたりしてることが多かった。

好きな男子やアイドルがいるわけでもなく通学時に見かけるサラリーマンやカフェの店員さんとか比較的年の離れた男性を観察している事が多かった。学校に男子もいるけど、なぜか全く自分とは関わらないであろう大人の男性の生態に興味があった。

部活帰りの暗くなった時間にわざと盛り場を歩いたり、痴漢に遭いやすい電車内に陣取ったりしてみたけど、地味な私に変わった事は起こらなかった。でも実際何かあったら怖くて逃げたと思うけど……

そんな退屈な8月のある日の午後、昼食を食べてウトウトしてると父から携帯に連絡が入った。

『今日これからコミセンの絵画教室なのだが、洋子さんが体調崩して急に来れなくなったんだ。大学とか方々あたったのだが代わりのモデルがみつからなくて。梨果、悪いけど今から来てやってもらえないかな。』

「えっ!?今日の教室って裸婦クロッキーの日じゃん!ムリムリ!何言ってるの!信じらんない!」

実は昔、父相手にヌードモデルをやっていた。でも5~6年も前の話。

『そこを何とか頼む。正直この教室は裸婦クロッキーがあるから受講者数を保ってるようなものなんだよ。』

確かに以前からそんな話を父はしていた。大学の非常勤講師だけでは私の音楽学校の教育費などを捻出するのが大変で、この教室の副収入で家計はかなり助かっているらしい。

『欲しい物があったら買ってやるから。受講者もお年寄りばかりだし裸婦クロッキーは洋子さんできちんとマナーを教えてあくまで芸術だと認識してる人たちだから心配するな。』

父を助けてあげようと思った。ついでにこの退屈な日々を変化させる出来事が飛び込んできたんじゃないかなと思った。
人前で裸になるのは嫌だけど父は家族だし、受講者はお年寄りばかりとのことだからサラッとできるかもしれない。まあ私なんかが行ってもみんなガッカリして帰っちゃうかもしれないけど……

「わかった。用意したらすぐ行くよ。」
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