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僕の麗子さん
第11章 エピローグ
僕はその言葉を信じられない思いで聞いていた。
「麗子さん、何故ここに居るの?」
「領くんに会いに来たのよ、一緒に暮らしましょう…」
「でも、旦那さんとはどうするの?」
「夫とは別れたわ…ジュエリーショップも閉店したの…」
「そんな事をしてまでして僕に会いに来てくれたの?」
「ええ、そうよ、領くんを忘れる事はできなかった…」
麗子さんの目には泪の滴が光っていた。
僕は麗子さんの所まで足早に歩いてゆく。
その麗子さんの身体を思い切り抱きしめた。
「麗子さん、僕、嬉しいよ…」
「領くん、もう私、隣の駅で降りても怖くないわ…」
「そうなの?」
「そうよ…領くんという駅で私は降りたのよ…」
そう言うと麗子さんは泪を流した。
僕は麗子さんの唇に自分の唇を重ねた。
もう何十年も会っていなかったようになつかしい気持ちでいっぱいだった。
「でも、これからどうやって生活していくつもり?」
「財産分与は済ませてあるし、お店を売ったお金もあるわ、少しの間だったら生活できるわよ…」
「本当に?」
「ええ…また、そのうち新しい仕事を立ち上げるわ…」
麗子さんと僕はしっかりと抱き合った。
この先、麗子さんとは一生一緒に居られるのだとその時思った。
富良野では7月になるとラベンダーが咲き乱れる。
その頃には僕も麗子さんも一緒に暮らせるだろう。
僕はその時を待つ事にした。
窓の外を見ると“なごり雪”がチラチラと舞っているのが見えた。
(終わり)