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とある家族の裏事情
第3章 番外編 〜とある老夫婦の話し〜
小さくて、すごく軽い………
太一は、こんなに小さかっただろうか…
育児なんて、ろくに手伝わなかったから
思い出せない……
なんて、可愛いんだろう………
そして、ハッと気付いて
「名前は、しょうた君と言うのか?」
と、太一を見ると
息子は少し照れた感じで
「父さんの名前の響きを貰ったんだ
漢字は飛翔の翔だけどね…」
その瞬間、心臓がきゅうっとして
目には涙が溜まってきてしまう……
隣で妻が
「やだ…お父さんがウルウルしてる…」
と、言いながら頬には涙が伝っている
母さんの方が先に泣いてるじゃないか……
泣いたのが気恥ずかしくて
「風に当たってくる」
と言って外に出た
病院の外に大きな木を
丸く囲んだ形の広場が
有ったので、そこのベンチに腰掛けた
少しすると妻が病院から出てきて
私の横に座り
「はい、目から出た分の水分補給」
と、ちゃかしたように言って
ペットボトルのお茶を渡してくる
「水分を失う程、泣いてないさ」
と、私も笑って受け取る
受け取ったお茶を一口飲んで
「ふぅっ……」と言うと妻が話し始めた
「翔太君、可愛かったですね」
「あぁ……」
目を瞑ると色々な事が思い出される…
「彼の大きくなる姿を見ていきたいなぁ」
「ふふ…それじゃぁ長生きしなくちゃ…」
「これからも共に生きてくれるかい…?」
「お父さんてば…当たり前でしょ…」
2人で見つめ合うと思わず
「くすっ」
と笑ってしまった
広場の大きな木の、葉が擦れあって
サワサワサワ…と優しい音を響かせていた