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ママ活
第1章 社長が昔のママだった──case1.明咲──

明咲(めいさ)が物心ついた時分、母親──…新藤綺美果(あらふじきみか)は、既に一人の女に戻っていた。
彼女に母親であった時期があったかはさておき、明咲から見て祖母に当たる第三者の介入が時々あって、一人娘が路頭に迷わない程度に面倒を見てくれていたのを除けば、寝ても覚めても頭は男のことでいっぱいだった。
ただし彼女は、いわゆるろくでもない類の母でもなかった。
男が泊まりに来る時は、埃一つ見落とさないよう家中を掃除していたような彼女は、娘がいることも特に隠さず、見事な手際で品数豊富な料理を準備して、彼をもてなす。気分が良ければ惚気話の聞き手をさせるくらいには、明咲を眼中に入れていた。
「貴女のお父さんも、顔は国宝級だったのよ。周りからは、美男美女カップルだと羨まれていたわ。どうしたって、子供が出来るなり行方をくらますクズ男には見えなかった」
明咲にしてみれば顔も知らない男の話題をことあるごとに出していた母親も、ここ数ヶ月、その「中出しクズ野郎」の頭文字も口にしていない。何十人目かの運命の相手に巡り逢ったという彼女は、またぞろ過去の男を振り返っている余裕もなくなったのだ。
母親の恋人達とは、何十人と会ってきた。そして明咲は、狭いアパートの薄壁を突き抜けてくる彼らと母親の愛の儀式の音色も、恋の数だけ聴いてきた。
今度の男は若手実業家で趣味はスポーツ、昼間の印象を裏切るようにして、エロティックに彼女の耳や首筋から全身をしゃぶり回して、彼女の劣情をねっとりと言葉で指摘するタイプのようだ。かけ布団にくるまっていても、明咲の睡眠を妨げてくる綺美果の絶叫。喘いで片言になった彼女の言葉に誇張がなければ、実業家のスポーツマンは、獰猛な肉棒を所持しているらしい。

