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ママ活
第7章 ママ活がガチ恋になるケース

…──私が面倒臭いんでしょう、連絡が空いただけでこまかいことを言う女だと、貴方は余計に距離を置きたくなるんでしょう。
こまかいとは思っていないよ。会議でスマホが見られなかった、事前に連絡しなかったのは俺の落ち度だ。
こまかいとは思っていない?私との約束はその程度なの?
幼かった時分の佐和子には、母親が正しいように見えていた。夫婦のルールを破った父親は怠慢で、彼女を苦しめている。
そんな風に考えて、自身に剃刀を向ける母親を取り押さえる使用人達の蒼白な顔を見ては、こうも美しい彼女をそうまで追いつめる父親を悪とみなした。
だが、佐和子の父親にも言い分があった。彼は、配偶者の愛の重さに耐えられなくなっていたのだ。
結局、両親は籍を入れたまま別居した。佐和子は父方の実家に通って将来引き継ぐ事業のための勉強をしながら、母親と家に残った。
それから母親は、家政婦達の勧めで、性感マッサージの利用を始めた。
彼女に呼ばれて家に出入りする男達は容姿に優れて、何より彼女の望む通りに対応した。ここ数年は彼女も浮ついた欲求が薄れたようで、淡々と仕事に打ち込んでいるが、佐和子が大学生だった頃、彼女の肉欲は全盛期だったのではないか。
こまやかな気配りのきく若い男達と遊ぶようになって、母親は仕事に支障をきたさなくなるくらいにまで回復した。金さえ出しておけば、男達は深夜にでも駆けつけるし、連絡も寄越す。
佐和子は、母親に気付かされた。
愛や容姿は、人間を繋ぎとめるための価値にならない。優れたそれらは、母親を幸福にしなかった。彼女に再び生きる力を与えたのは、金で手に入れたものだ。
第7章 ママ活がガチ恋になるケース──完──

