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ママ活
第7章 ママ活がガチ恋になるケース








 佐和子の母親は、心の均衡を崩しやすい。

 今でこそ彼女のような人間をメンヘラとでも呼ぶのだろうが、佐和子の父親、つまり彼女のパートナーと別居婚を始めた以前は、使用人らも手を焼いていたほどである。

 彼らは、互いに耽溺した末の恋愛結婚だった。
 美しい父と、彼以上に美しい母。見目麗しい二人の間に生まれた佐和子も、その遺伝子を継いでいた。よって物心ついた時分から、同世代の子供達は、年相応の清らかな好意を佐和子に向けていたものだ。

 だが、佐和子は恋愛というものを経験しなかった。それは、生まれてから四十二年経った今もだ。初めてのキスもセックスは、相手の顔も名前も覚えていない。

 おそらく佐和子は、物心ついた頃から人の感情に恐怖していた。好意を含む、執着に紐づく感情全てに。

 その恐怖を植えつけたのは、おそらく佐和子の母親だ。
 彼女は良人に並外れた愛情を向けていた。彼との間に産まれた佐和子も、愛する人の血肉の一部として愛していた。だが、彼女の愛情は病的だった。
 例えば、夫婦は各々の実家の家業を継いでいた。離れている昼の時間帯、一時間ごとにメールを交換していて、良人がうっかり怠れば、夜、彼女は彼を罵倒して、虐待する。
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