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ママ活
第4章 愛しのお姉様と姫とママ
四月最後の土日も明けて、ゴールデンウィークに入ると、明咲は温泉旅館に出かけた。小川佳歩(おがわよしほ)との初めての外泊だ。
宮田に逢うまで、明咲が制服の他に与えられていた洋服や肌着は、親族らのお下がりだった。それはまだしも、風呂の使用を連日禁じられることもあれば、母親と彼女の恋人に加わって洒落た店での外食の予定がなければ、美容院にも行けなかった。
中性的な女を好む女子生徒らの賛辞の的になって、コンプレックスは薄れたが、劣等感から人との交流を避けていた内に、明咲は佐和子と契約した。それから彼女と別れたあとも、空いた時間はアルバイトに明け暮れた。
つまり佳歩は、初めての親しい友人だ。余暇の大半を佐和子や亜純との予定に割いていた一方で、明咲は彼女との約束事を可能な限り優先して、仲を深めていた。
佳歩は、SNSの美容系アカウントを、今も熱心に更新している。温泉旅館の周辺には、話題の神社や絶景名所、土産物屋が集っていて、STRAWBERRY FIELDSの春の新作、ブラウンの濃淡でリボン柄があしらわれたロングワンピースでめかし込んだ彼女は、スマートフォンのカメラアプリを駆使している。
くりりとした丸い目に、柔和に端の上がった唇、白い肌──…胸まである黒髪を下ろしてカチューシャをしているだけで、か弱げで儚げな、且つ垢抜けた風情になる彼女には、明咲の憧れていたものが備わっている。妹がいて、彼女とは何でも打ち明けられる仲というのも、まるで別次元の環境だ。