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ふたりの娘
第3章 背伸び
その日、結衣子の指示で走らせたレンタカーは、20分程でアメリカンなショッピングモールに着きました。

「うん、ここだ!」
結衣子の目的は美容室でした。そして既に予約も済ませていました。

「お父さんさん、どうする?」
結衣子が髪を切っている間、私は手持ち無沙汰です。少し困った顔をした私に、結衣子は悪戯な表情で私の髪を触りました。

「ユイと一緒に髪切る?」
「この前、散髪したとこだよ」
「ですよねー」
結衣子は手を振りながら美容室の扉を開けると、中に入って行きました。私は妻のワンピースを着た結衣子の後ろ姿を見ながら、苦笑していました。

結局3時間くらい、私はショッピングモールで時間を過ごしました。2時前くらいに結衣子から、終わったとメールがありました。私はショッピングモールのソファに座り、眠っていました。

『お父さん、どこ?』
私が短いメールに返信すると、5分程で結衣子が現れました。そしてその姿に私は息を呑みました。

「どう、お父さん?」
私の目の前に、少し照れた顔の結衣子が立っていました。ショートボブだった黒髪はベリーショートになり、銀に近い金髪になっていました。

「えー、金髪にしたの?!」
「金髪じゃないよ、アッシュシルバー!」
私の驚きに対し、結衣子はいつものように口を尖らせました。その顔は美容室でメイクをしたのか、ずっと大人びて見えました。

「お母さんに怒られない?」
「春休み限定だから、大丈夫!たぶん…」
悪戯な顔でそう言うと、結衣子は私の腕を掴み歩き出しました。

「髪の色、お父さんとお揃いになったね!」
歩きながら背伸びをすると、結衣子は私の白髪頭を触り笑っています。私の目の前すぐに、結衣子の艶やかな唇がありました。私は義理とは言え不覚にも、娘に気持ちを少し乱されていました。

「お腹減ったー!お昼、お昼!!」
結衣子は無邪気な鼻歌を口ずさんでいます。そして私にピッタリ寄り添う結衣子の身体から、甘い匂いが漂っていました。
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