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第6章 結衣子の…

「…これで舞台に出るんだよ」
空気を元に戻そうとしたのか、結衣子が明るい声で話しかけました。そして私もそれに応えるため、少し大げさに返事をしました。

「わ、ホントにユイちゃん？」
「なに、変？ヤバい？」
裾からウェディングドレスのレースが覗いていますが、結衣子はぼろぼろの茶色の布を纏っています。そして同じような茶色の布を頭に巻いていました。

「いや、変じゃないけどｗ。それが昔の掃除係の人？」
「うん！おとぎ話だからねｗ」
そう言って笑う結衣子の唇が、鮮やかなルージュで彩られていました。私はまた、少しドキドキしていました。

「じゃあお父さん、お願い！」
「その頭巾とぼろぼろの布をはぎ取ればいいの？」
「うん、ここを引っ張ると外れるから…」
結衣子はぼろ布を止めた布ベルトを指すと、引っ張る真似をしました。

「あと、先に頭巾から取ってね！」
「うん、わかった」
「じゃあ、一回リハするよ」
結衣子の指導でリハーサルのリハーサルを済ますと、実際に早替わりをすることになりました。

「じゃあ、本番ね…」
「本番は文化祭だよねｗ」
「今はユイ…お父さんと本番なの」
真面目な顔で話す結衣子に、私は少し戸惑いました。しかし最後の文化祭に臨む可愛い娘の頼みに、私も真剣になりました。

「ユイちゃん…ゴメン、もう一回リハしてくれる？」
「うん、いいよ…何回でも」
「いや、もう一回で覚える！」
頷いた結衣子も真面目な表情で、私の手を取りました。そして一連の動きをまた確認しました。

「最後はユイをギュッと抱きしめてね」
「うん、わかった」
結衣子は私の目をしっかり見ていました。そして私の手を引っ張ると自分の首に回しました。

「このあと…ユイにキスだからね」
「うん、ちゃんとフリするから…」
「よろしくね、お父さん…ｗ」
少し笑顔になった結衣子に、私は真面目に頷きました。そして愛娘の舞台、ラストシーンが始まりました…。