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無能淫魔とサディスト男
第6章 喋る道具と残酷無慈悲なご主人様達(R18・R18G)
行ってみようかな...。
ロゼッタは立ち上がった。ここでうずくまっていても状況は何も変わらない。
何より彼女は何かで気を紛らわしたかったのだ。
ふらついた足取りで彼女がドアに近付く。不用心な事に金色の鍵がささった状態だった。
彼女はゆっくりとドアノブを回した。
え、森...?
眩しい光の中、歩みを進めたロゼッタの視界に現れたのは、草木や花々、樹木等が生えた自然豊かな森だった。
“あれ、さっきまで私、クルーエル様のお家にいたのに....あのドアを通ったから?ここって一体....。”
「貴方、どなた?」
森の中をキョロキョロと見渡していると、芯のある凛とした声に呼びかけられた。
声のトーンからして女性かと思われ、ロゼッタは周囲を確認するが、人影一つ無いのである。
「わ!」
メイドの服の裾を誰かにツンツンと摘まれ、びっくりしたロゼッタは慌てて振り返る。
すると、そこにはロゼッタの背丈程の高さの真っ赤な薔薇が優雅に風に吹かれていたのだった。
声の主は喋る事が出来る植物だったのである。
「...すみません、もしかして今、私の服に触りましたか?」
「その通りですわ。だって全然気づかないんですもの。」
そして恐る恐る問いかけたロゼッタに対し、真紅の薔薇は堂々とそう返答する。口を開くたびに中心部のおしべに僅かな隙間が生まれるのが何とも不思議な光景だった。
「ところで、貴方誰何なの?チェシャーネ様のお客様かしら?」
「えっと、あ、ロゼッタって言います。すいません、チェシャーネ様ってどなたの事でしょう?ここの森の管理人の事でしょうか?」
状況がいまいち理解出来ず、ロゼッタがそう尋ねると、朱色の薔薇は鮮やかな赤からロイヤルブルーへと姿を変えたのだった。
「大変ですわ。今すぐお伝えに行かなくては。」
頭に?を浮かべているロゼッタの疑問に答える事なく、彼女に背を向けると背丈の長い薔薇は、通り風と共に姿を消してしまったのだった。