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人質交換を託された女
第12章 籠城戦の行方
一瞬、第2の扉に視線が向いてしまう。今の状況で自分だけ逃げだすなんてことはできない…そんな迷いが私の体の動きを止めた。

「ハァッ…」という吐息が聞こえ、私は体の向きを佐伯さんに戻した。

佐伯さんは床に座り込んでいた。そして、そのまま力なく、項垂れていた。

彼女は力を失い、前屈みになって、腹這いになってしまった。彼女の背中がよく見えた。肘を後ろで折りたたまれ、彼女の腕には封印の輪が通されていた。この輪は最後の最後まで、自身の肉体が解放されるまで外れることがない輪だった。

それを確認した途端、私も床に座り込んでしまう。

彼女の首を艶やかな色で彩るスカーフが外された。それは男に奪われ、結び目がギュッと絞られ、彼女の口元に運ばれた。
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