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人質交換を託された女
第14章 惜別の品
もう服の上に、縄という服を着せられたような、どこにも緩みのないフィット感だった。体を動かせば、「ミシミシ…」と縄の軋む音が聞こえてくる。後ろに束ねられた両腕は、常に縄で吊るされているような感覚がして、もう全く動かせなかった。

ゆっくりと体の向きを変えられ、今度は背中を壁に接し、彼と向き合う体勢になった。表情を隠していた髪が、彼の手で後ろに流されていた。

「戸北…そんな顔をしないでくれ…また襲いたくなるじゃないか…」
彼に『そんな顔』と言われ、自分でも顔と耳までも赤くなっていくのが分かった。

「お互い…生きてここから出られたら…襲ってください…」

すぐ目の前に彼の顔が見えていた。ふっと微笑む表情に、私も微笑み瞳を閉じた。

互いの唇が激しく触れ合い、口を重ね合い、そしてゆっくりと、優しく柔らかい唇を感じ合っていた。
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