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霧中の夢
第1章 霧中の夢
そして、時は過ぎ臨月を迎えた。
初めての出産だったので痛みは激しかった。
分娩室では16時間も痛みに耐えていた。
もう少しで子供が生まれると言うその時だった。
僕は眩い真っ白な丸い光に包み込まれた。
その光の中にはトンネルの様なものが現れていた。
僕は、そのトンネルに吸い込まれてゆく。
トンネルはとても暗くて狭くて少しだけ怖かった。
暫くそのトンネルを泳いでゆくと出口らしき光が現れてきた。
僕はその出口らしき光へと必死に泳いでいった。
そして、その暗いトンネルを抜けていった。
すると、沢山の知らない人たちが居て、僕は怖くなって泣いたのだ。
その知らない人たちは、産婦人科の医師や助産婦さんだった。
僕はお包みにくるまれて、由美の腕に抱かれた。
僕は大きな声で“オギャー、オギャー”と泣いていた。
由美はそれを見るととても嬉しそうだった。
由美は僕を抱きながらこう言うのだ。
「優一さん、おかえり…会いにきてくれたのね…」
僕は小さな手で由美の指を力いっぱい握りしめた。
(終わり)