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私立桐邦音楽大学附属中学校
第18章 小山田梨果と銭湯
翌日通常の授業を一通り受け放課後となった。それまで弘斗は小山田梨果を眺めるだけで特に関わることは無かった。

(小山田は昨日の約束を覚えてるのだろうか……)

夢のような昨日の放課後。それだけに昨日の約束も夢だったのじゃないかと曖昧になる。


「室賀どうした?帰らないのか?」

帰り支度を終えた直江に声をかけられた。

「小山田を待っているんだけど……」

「小山田?そういえば馬場先生に呼び出されたまま帰ってこないな。」

小山田梨果は帰りのホームルームのあと担任の馬場教諭に教官室まで来いと呼び出されていた。

「そうなんだよ。」

「小山田に何か用があるのか?」

「あ、ああ。」

「よかったな。」

「え?うん、もう少し待ってみるよ。」

「そか、じゃあ俺は帰るな。」

「おう。」

直江は教室を出て行った。

「あれ?高遠?」

高遠美月が残っていた。いつの間にか皆下校して教室に2人だけになっていた。

切りそろえられた漆黒の髪に色白でつぶらな瞳。日本人形のような小柄な少女。

(コイツもよく見ると和風な美人だな……)

男子生徒の中には根強いファンが多いとの噂を耳にする。

(確かに可愛いが発育が悪すぎる!)

「……なに?」

胸部に失礼な視線を感じたのか幼い顔をしかめる高遠。

「あ、いや……じゃあな。」

会話に困り教室を出ようとする。

(……昇降口で待っていよう。)

「まって、梨果との約束は?」

「え?」

「梨果と昨日約束したでしょ?」

「あ、ああ…え??」

(夢じゃなかったんだ!)

「忘れてたの?」

「い、いやそうじゃなくって……でもなんで高遠が?」

「私も誘われた。」

「は?」

「なに?」

「小山田には何て誘われたんだ?」

「銭湯に行こうって。」

(やっぱり夢じゃないよな。)

「高遠は銭湯好きなのか?」

「行ったこと無いからわかんない。」

「そ、そうか…」

「うん。」

人見知りの女子。一問一答で会話が続かない。
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