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私立桐邦音楽大学附属中学校
第3章 恋心
「いいよなー室賀。」

「あー?なにが?」

「角山と話す機会が多くてさ。」

「ああ…そっか。」

直江が角山に好意を抱いているのは知っていた。弘斗にとっても角山との会話はときめきの時間だった。

(……)

高遠美月たちと談笑する角山奏音を見る。

(……)

次に1人自席で本を読む小山田梨果を見た。

(!!!!!)

目を逸らしてしまった。


小山田梨果は目立たない女生徒だった。弘斗にとっても春のクラス替えでの自己紹介の印象しか残っておらず、その頃は寝癖も気にしないような女子だった。

(今とは全然違ったような……)

小山田梨果が変わったのは夏休み明けからだった。見違えるように垢抜けて一部の男子生徒には小山田梨果の素材の良さに気付いた者もいた。

(あっ……)

弘斗が過去の記憶を辿りながらぼーっと小山田を見ていたら目が合ってしまった。
小山田はにっこりと微笑むと鼻先に人差し指を立てていた。

(着替えの時の件はナイショね)

そんな意味なのだろう。

二年間角山奏音に憧れていた弘斗であったが、この瞬間から小山田梨果に対して恋心を抱き始めた。
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