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私立桐邦音楽大学附属中学校
第5章 広告モデル
学校までの道すがら弘斗は動悸と緊張で全く小山田と会話ができなかった。

(ううう…緊張する…)

聞きたいことは山ほどあった。わざと下着を見せるようなあの行動についても、あの親しげな他校の男子についても、そして昨日見た進学塾の広告ポスターについても。

(てか歩くの速くね?)

腕時計を見ると遅刻ギリギリの時間だった。小山田の歩くスピードも速く、ぐずぐず考えている間に学校に到着してしまった。

(とほほほ…………ん?)

校門を過ぎると校内の様子がいつもとは明らかに違うのがわかった。


「来たぞ来たぞ!小山田だ!」

校舎を見上げるとクラス学年関係なく全ての窓から沢山の生徒たちが顔を出していた。

「え?あれが2年の小山田梨果?!」

「かわいいじゃん!」

「あれが小山田梨果だってさ!」

「あんな子ウチにいたんだ!」

「よく見えねえよ。」

「おい、押すな落ちるだろ!」

「正当派美少女じゃん!」

「お前角山とどっちが好き?」

「角山・高遠の牙城を揺るがすな。」

「確かによく見ると美人派の角山とロリ担当の高遠の中間を埋めるような逸材かもしれんな。」

「学校だとあんな地味なのにねー」

皆が小山田梨果に注目し各々勝手な会話をしていた。それに気付いた彼女は足早に昇降口に逃げ込んだ。


そして階段を上りざわつく教室に入る。

「……」

やはり異様な雰囲気の教室に戸惑う様子の小山田梨果。

「お…おはよう。」

「お、小山田!あれは本当に小山田なのか?!」

「えっ…?」

クラスメイトたちが一斉に小山田に群がる。
様々な質問を小山田に投げかけて収集がつかない状態だった。

「ちょ…み、みんな…」

どうしていいのやらしどろもどろの小山田。見かねて声を上げたのは弘斗だった。

「ちょっとみんな落ち着けよ!小山田が困ってるじゃないか。」

「んだよ室賀!仕切んな!」

「室賀の言うとおりだよ!」

そこに角山奏音が加勢した。なぜか男子たちは角山には従う習性がある。


「あ、あの塾の広告…小山田なんだろ?」

内藤隆俊が代表して問いた。そして小山田梨果は頷いた。

「うん。」
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