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私立桐邦音楽大学附属中学校
第1章 はじまりのお話
「あーあ、さて帰るとするか…」
「室賀くん。」
一通りみんなの演奏が終わり解散になった時、先ほどペアを組んだピアノの小山田梨果が弘斗に声をかけた。
「あ?……えっと、小山田…だっけ?」
「うん。私の伴奏やりづらかった?」
小山田との初めての会話、しかし彼は黒髪を耳にかける姿に気を取られて彼女の言葉が聞き取れなかった。
「え?なに?」
「私の伴奏やりづらかった?」
高遠美月ほど低身長ではない彼女だが、長身の弘斗の顔をのぞき込むようにそう問いた。
「い…いや、そんなことなかったよ。むしろ弾きやすかった。」
「そっか。」
「なんで?」
「…わたし去年2ヶ月くらいブランクがあって自信がなくって。」
演奏家にとって2ヶ月のブランクは致命的だ。しかしそれを弘斗は感じなかった。短期間で彼女は努力したのだろう。
「いや、俺にはそんなブランクは感じなかったよ。頑張ったんだな。」
「ありがとう…。それ以上に奏音は頑張ってるよね、見習わないと。」
「俺も頑張ってはいるんだけどね。角山の場合、楽器がいいんだろ?」
「あははははは。そうかもねー。」
「……」
(小山田梨果…一見地味な女子だけど笑顔が可愛いな…)
「ありがとう!じゃあ行くね!またペア組めたらよろしくね。」
「お、おう…」
小山田梨果は音楽室から出て行った。
その後、弘斗と小山田はペアになることはなかった。それに伴って2人が会話をすることもなかった。
「室賀くん。」
一通りみんなの演奏が終わり解散になった時、先ほどペアを組んだピアノの小山田梨果が弘斗に声をかけた。
「あ?……えっと、小山田…だっけ?」
「うん。私の伴奏やりづらかった?」
小山田との初めての会話、しかし彼は黒髪を耳にかける姿に気を取られて彼女の言葉が聞き取れなかった。
「え?なに?」
「私の伴奏やりづらかった?」
高遠美月ほど低身長ではない彼女だが、長身の弘斗の顔をのぞき込むようにそう問いた。
「い…いや、そんなことなかったよ。むしろ弾きやすかった。」
「そっか。」
「なんで?」
「…わたし去年2ヶ月くらいブランクがあって自信がなくって。」
演奏家にとって2ヶ月のブランクは致命的だ。しかしそれを弘斗は感じなかった。短期間で彼女は努力したのだろう。
「いや、俺にはそんなブランクは感じなかったよ。頑張ったんだな。」
「ありがとう…。それ以上に奏音は頑張ってるよね、見習わないと。」
「俺も頑張ってはいるんだけどね。角山の場合、楽器がいいんだろ?」
「あははははは。そうかもねー。」
「……」
(小山田梨果…一見地味な女子だけど笑顔が可愛いな…)
「ありがとう!じゃあ行くね!またペア組めたらよろしくね。」
「お、おう…」
小山田梨果は音楽室から出て行った。
その後、弘斗と小山田はペアになることはなかった。それに伴って2人が会話をすることもなかった。