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私立桐邦音楽大学附属中学校
第1章 はじまりのお話
課外授業を終えた弘斗は昇降口前のベンチで直江に伴奏でミスをした罰として奢らせたジュースを飲んでいた。

「ちぇー結局お前とペア決定かよー」

「ちぇ、俺だって角山とが良かったよ。練習を口実に何度も会えるし。」

「あー…。」

「角山奏音…いいよなー。」

「そうだな…でも直江、あんなお嬢様は俺たちとは釣り合わないぞ。」

確かに角山奏音は美人で背が高くて中学生離れしたスタイルは抜群。男子の人気はトップクラスだ。しかし日本を牛耳れるほどの一族のご令嬢との噂がある。

「その噂本当なのかなー、あんなに気さくな子なのになー。」

「だなー。」

(俺だってあんな女子と付き合いたいよ…)

弘斗がそう思った時。

「おっと、噂をすれば角山だぞ。」

昇降口に角山奏音の姿が見えた。モデルのようなスタイルは見間違いようもない。

弘斗たちに気づいた角山が昇降口で靴に履き替え彼らに歩み寄る。2人の女生徒と一緒だ。高遠美月と小山田梨果だった。

「室賀。直江くんもなにしてるの?」

「これから帰るところ。お前らは?」

「これから部活だよ。」

「バドミントンか。」

「そうそう。」

この3人の女子はバドミントン部に所属していた。

「……行こう奏音。」

ボソッと小声で呟いたのは角山の後ろに隠れていた高遠美月だ。人見知りの彼女は早く男子たちから離れたかった。

「美月…わかった。じゃあね室賀。」

「おうまたな。」

「か…角山さん、また明日。」

「直江くん、また明日。」

角山奏音と高遠美月は部室棟に向かって行った。すれ違う男子生徒たちが振り返るほど角山奏音は美しさを醸し放っていた。

「おい聞いたか今の!角山が俺に“また明日”って言ってくれたよ!室賀!」

「はいはい…よかったな。」

「室賀くん。」

角山に見とれる彼らは背後に1人残っていた女子に気づかずにいた。声をかけられ振り返ると小山田梨果がいた。
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