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私立桐邦音楽大学附属中学校
第2章 朝のご褒美
「はあ……また寝坊した……」

弘斗は朝がめっぽう弱く朝のホームルームに間に合わないことが多々あった。しかし制服のポケットに手を突っ込みながら急ぐ様子もなく歩く。

「うぅー寒い寒い。」

昇降口まで辿り着いたところで中からクラスメイトたちがぞろぞろと出てきた。

「お、室賀。まーた遅刻かよ。」

「うっせーよ内藤、お前だって今日たまたまだろ?」

「バレたか。なにしろ今日の一時間目は楽しい楽しい体育だからな。うふふっ。」

クラスメイトの内藤隆俊(ないとうたかとし)、彼は運動と女子情報に特化した男子で弘斗とは小学校からの腐れ縁だ。

「早く着替えて来いよなー」

「このクソ寒いのに嫌なこったー」

内藤に適当な返事を返して靴を脱ぎ簀の子に上がると目の前に美しい少女が現れた。

「あ、室賀、昨日珍しく早く登校したと思ったのにまた遅刻?」

その美少女は角山奏音だった。そして後ろに隠れるように高遠美月がいた。

この学校にも指定のジャージがあるのだが、体育の時間に限っては着用を禁じられていた。なのでこの時間は体操着とハーフパンツ姿という冬場でも比較的布面積の少ない女生徒を拝むことができた。

「か…角山。」

角山の存在感のある胸部が目に入る。体操着は制服より胸の大きさが強調されるからだ。

(こりゃ朝からご褒美ありがたい!)

「お…おはよう。」

「おはようじゃないよ。ホームルームで先生が“室賀はまた遅刻か!”って怒ってたよ。」

「あー…」

「まったく寝ぼけて…いいから早く着替えな。」

「ああ……」

角山は弘斗の横をすり抜けて校庭に出て行った。

(クンクン…ああ…角山なんていい匂いがするんだ…)
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