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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第13章 白い花
「起きた?」
「シアン……?」
シアンが寝かされていた部屋とは別の客間で、オメルも意識を取り戻した。
「こ……ここ、どこだ?」
「騎兵師団の将官の屋敷だ。宿舎から僕たちを運んでくれたようだよ。僕は覚えていないけれど」
「オレも覚えてない…──ッ ぃたっ」
オメルが跳ねるように身体をおこし、痛みに襲われて顔をしかめた。
シアンはそんな彼を押さえて、もう一度寝かせる。
「無理に動いてはいけない」
服を着ていない裸のままのオメルに、薄い布団を肩まで被せてやった。
「悪いけど寝ている間に身体を見せてもらったよ。汚れは綺麗に洗われていたし腹の中のモノも掻き出してあった。…おそらくこれも将官の計らいだね」
「…身体って……オレの、見たの?」
「ちゃんと外に出しておかないと、後でお腹を壊すんだ」
そう話しながら腰を上げたシアンが、壁際の飾り棚から水差しを取って戻ってくる。
「痛むのは傷のせいだ。だからこれを飲んで。鎮静薬」
「ちんせ…?、何?」
「阿芙蓉(アフィヨン)というお薬さ。傷の痛みを和らげてくれるから、楽になるよ」
「何それ……それも将官がくれたのか?」
「これは僕の私物だよ」
粉末状のそれを水に混ぜておいたものを、ゆっくりと口に注いでやる。
寝転んだ態勢で飲みにくそうではあるが、オメルはちょびちょびと喉に流し
そしてその直後、あまりの苦さに苦悶する。
「ぅ、ぅぅぅぅ…!!」
「苦くても吐き出したら駄目。はい飲む」
「…ぅぅ…に、にが」
「……そうだね、苦いね」
なかば無理やりシアンが注ぎ込む薬をとてつもなく嫌そうな顔でオメルは飲み続ける。だが水差しの中が半分ほど無くなると、涙目の彼はついに口を閉じてイヤイヤと首を振った。
オメルが残したぶんは、代わりにシアンが飲みきった。
「…!苦くないのか…!?」
「もう慣れたよ。……眠れない夜にときどき飲むんだ。この薬は痛み止めにもなるし、睡眠薬にもなるから便利だよ」
「眠くなるの?」
「そう、ぐっすり眠れる」
阿芙蓉(アフィヨン)というのは値がはるが、同時にありふれた薬だ。原料の植物は外国で育てられ、キサラジャにも広く流通している。
その効能を説明してやると、オメルはいつものように不思議そうな顔でシアンを見上げるのだった。