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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第13章 白い花
「──…どうしてシアンは、そんなに物知りなんだ」
「……?」
「…ああ、なんかさ、なんて言うかさ」
そして今度は寂しそうな表現を見せる。
「初めはシアンのこと、オレと同じだって思ったけど……でも違うよな。ぜんぜん違う。キレイで賢い。すっごく賢いし、それに強い」
「それは、かいかぶりすぎだ」
「違う!シアンはっ…違う、こんなとこであいつ等に馬鹿にされるのは変なんだ。ここにいたらダメなんだよシアンは!」
オメルは早口で叫んだ後、シアンに見つめられて…どうすればいいかわからずに布団を頭まで被った。
「オレはっ…あいつ等にああいうコトされるの…初めてじゃねぇよ……?」
「……」
「でもシアンが襲われるのは凄くイヤだった…!シアンには……見られたくなかったよ……、なんで」
布団に隠れた内側で、彼は泣いているのか。薬の副作用で一時的に興奮しているのかもしれない。
「君を助けられなくて……ごめんね」
「…っ」
「僕は奴等を止められなかった。…すまなかった」
すすり泣く頭にそっと義手の手を添え、シアンは静かに水差しを置く。
この小さな身体がいま、ありえない不条理のただ中で吐き出した苦しみを──拭う方法を知らなくて。
そして、手を添える事さえはばかられたシアンは、後ろに振り返り、彼の寝る寝台に背を付けて床に直接腰を下ろす。
「僕にはこうなる事が予想できた。王宮(ここ)へ来ればどんな目に合うかも全て知ったうえで来たのだから。だから僕の責任だよ」
平謝りとはなんて卑怯な。シアンは自分でそう感じた。
「…シアンが謝るなよっ…シアンだってつらかっただろ」
「僕は辛くないんだ。彼等に何をされても耐えられるんだよ。目的が…あるからね」
「……、目的……?」
「そう。目的を持つのは大事な事だ。僕に強さと……そして意味をくれる」
「…意味ってなんだ」
「生きるための意味だよ」
シアンが穏やかに語りかける。あんな扱いを受けていながら、辛さや怒りをまったく感じない落ち着いた声だ。
けれど落ち着いているが故に、身体の芯まで染み込むような深い憂愁を強調する。そんな彼の言葉を聞いて、オメルは思わず布団から顔を出した。