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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第14章 面影
そして翌日。
国王との面会を認められなかったバヤジットは、苛立ちながら早足で門を出た。
昨日も王宮へ出向いたが、「陛下の体調が優れない」と侍従達に邪魔されたのだ。
“ それにしても俺が訪ねた時の侍従どもの慌てようは何だ。面会謝絶はタラン侍従長の指示なのか? ”
仮にもバヤジットは近衛隊の将官だ。数ヶ月前までは国王への拝謁(はいえつ)を許されていたのである。
それが、バヤジットが国境へ配属されていた間に、確実に状況が悪化している。
“ 陛下はご無事なのだろうな…!? ”
嫌な予感がバヤジットを襲う。
「──くそ!」
バシュという立場でありながら陛下の傍に居られないもどかしさで、我慢ならないバヤジットは建物の円柱を拳で殴った。
「そのように荒ぶったお姿を晒されては…また貴族のご婦人方に怯えられてしまいますよ?」
「…!? お前…」
拳を柱に当てたまま前を見ると、どこから現れたのかシアンが穏やかな表情でそこへ立っていた。
「お前か……。昨夜は邸に戻らなかったが、いったいどこへ行っていた?」
「ご想像にお任せします」
「チッ…口の減らない奴だな。出歩くなと行ったそばからコレか」
日照りのきつい朝でも汗ひとつ無い涼しい顔のシアン。そんな彼は今のバヤジットの苛立ちをつのらせた。
「いや…っ…お前にあたっても仕方がないか。俺のこの姿も、部下に見せていいものではないな悪かった」
「貴方は本当に隙がありませんね」
「ん?」
「理想的な上官だと申しただけです」
「そうか」
シアンの褒め言葉を仏頂面で受け流し、ひりつく拳を下げて荒ぶる気をなんとかなだめる。