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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第14章 面影
…けれどシアンの次の言葉を聞いて、気を落ち着かせたつもりが一瞬で哮り立った。
「ところで僕を部下と認めて下さるなら…ひとつ相談があるのですけれど」
「相談?なんだ言ってみろ」
「もともと僕が推薦されたのは貴方の騎兵師団です。そこで直属の上官となる貴方から、僕を王宮警備兵(ベイオルク)に推薦して頂くことはできないでしょうか」
「ッッ…ベイオルク?何を言っている!」
「バシュにはその権限があると聞きました」
「確かにあるがお前を選ぶわけが無いだろう!陛下の身辺をお守りする何より重要な役目だぞ」
「…そうですね、冗談です」
「……っ」
冗談ならわざわざ言うな
「バヤジット・バシュはこれから訓練ですか?」
「いや…違う。俺は一時的にジエルへ戻ってきているが、本来の配属先はここでは無い」
「帝国と争っている件ですね。その指揮官は貴方だそうですが、…どうして単身でお戻りになったのでしょうか?」
「……お前は知らなくていい」
「では勝手に推測しますが──…タラン侍従長の動向を探る為なのでは?」
「…っ…何故お前がそれを知っている!」
確信をつくシアンの言葉はますますバヤジットを焦らせた。
「ちょっ……お前、こっちへ来い…!」
バヤジットはシアンの腕を掴んで建物の影に引き込んだ。
陽の日が当たらない隘路(あいろ)で、逞しい腕がシアンを壁に押し付ける。
「その話を誰から聞いた?」
「カナート(地下用水路)をめぐる帝国との争いは明らかに不自然です。帝国の水源はキサラジャだけでは無く、対立が長引いて損をするのは我が国だと…──そんな簡単なコトを議会が知らないわけがない」
「その通りだがっ」
「議会で実権を握っているタラン侍従長。彼がこの件を操っているのだとすればその矛先は勝ち目の無い帝国では無く
むしろ──…皆の関心が帝国に向いた今の、この隙だらけの王都にあるのではと」
「……!!」
「…それを睨んだ貴方が議会の方針に背きひとり王都へ戻って来た。そう推測したまでです」
「お前……いったい何者だ……!?」
バヤジットはシアンの推理に関心したが、同時にさらなる疑心も招いた。