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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第16章 神に捨てられた子


「あいつ…っ」


 民兵を問い詰めていたバヤジットは、ふと振り返ったそこにシアンの姿が無い事に気が付いた。

“ また勝手な行動を……ッ、やはり兵隊の心得がなっておらん。王都に戻ったら基本から叩き込んでやる!…いや違うか。そもそもあいつは兵隊ではなかったな、なら…… ”

「あ、あのぉ~貴族さま?」

「…っ、なんだ!?」

「ひぇっ!いえ!なんでもございません!」

 バヤジットに胸ぐらを掴まれている平民の男が、宙に浮きそうな足をガクガクと動かして縮こまる。

 そんな二人の周りには、頭を土に付けて跪く他の民兵達──。プライドも何もあったものではなかった。

 彼等はみなバヤジットが何を問うても平謝りで、何ひとつ情報をよこさない。

「貴様らはもういい時間の無駄だ!村に配属されている近衛兵はどこにいる?」

「ほかの貴族さまは今ごろっ……、えーーっと……」

「はっきり言え」

「…っ…村の北側に家屋がありましてそこに何人かが集まってやがります、はい」

 口ごもった平民は、バヤジットの目に鋭く睨まれてストンと表情を失ったかと思うと、小声でごにょごにょと話し始めた。

「食いもんの支給もそこであります」

「天幕があった場所とは別か?」

「そりゃあ…貴族さまがおれらになんか近づきませんよ。近づくとしたらその時は──…」

「……?」

 含みのある言い方だった。バヤジットが怪しむと、周囲の男達も頭を下げたまま互いに目配せをする。

“ この者達、何を隠しているんだ……? ”

「貴様がそこへ案内しろ」

「え、いや……ぅ……、へい!」

 平民達の妙な一体感に薄気味の悪さを覚えるバヤジットは、男の胸元を引きずったまま近衛兵の所へ案内させた。



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