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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第16章 神に捨てられた子

「──…!?」

 そして連れられた場所で近衛兵を見つけたバヤジットは、ただならぬ状況を眼前にして、家屋の入口で立ち尽くした。

「あっ?貴方はまさかバヤジット・バシュ!?」

「ハァッハァッ…あ?バシュだと!? まさかそんなわけ──ッ」

 バヤジットが訪ねたのは、ウッダ村の中でも比較的──まだ綺麗に整えられている方の家屋だった。

 その中では有り得ない事に、隊服を来た兵士たちがそれぞれに女を侍らせて淫行におよんでいたのだ。

「貴様らっ…!! 言い逃れは考えているのだろうな!」

 バヤジットは声を荒げて兵士達を叱咤した。

 何が起こっている?陛下の威光を示さなければならない近衛兵の──この蛮行はなんなのだ?

 酒と体臭のむせかえる小さな家で、今にも殴りかかってしまいそうな衝動を堪えるバヤジットは、案内人の胸元を掴む拳をこまかく震わせていた。

「…ッひ、バシュ!どうして貴方がこのような場所にいらっしゃるのですか!」

「俺は質問を返せとは言っておらん。弁解ができるならしてみせろと言ったんだが?」

「弁解ですか。ええと、実はこの女達がですね無理やりせまってきまして…」

「嘘だった場合どうなるかわかっているな…!?」

「…っ、ぁ、ぃゃ」

 若い女を後ろから犯していた兵士が相手を突き飛ばして敬礼する。

 乱れた衣服すら直さないところを見るに、逃げ道は無いと腹をくくったのか。

「そもそもその女達はどこから連れてきた?もとよりウッダ村に娼館は無かったと記憶している」

「……っ」

「……!待て、まさかとは思うが…!」

 きまり悪そうに下を向く近衛兵たちを見て、ある事を察したバヤジットは言葉を止めた。

 その足元で、引きずられてきた案内の平民がビクリと肩を震わせる。

 肌をさらして組み倒され、涙を流している女達は、容姿も衣服も…娼婦にしては飾り気がない。

 まさか……?

「自らの妻子を抱かせているのか…?」

 バヤジットは近衛兵ではなく、足元にいる平民の男に問うた。


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