この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第20章 冷たい手枷
「止まれシアン!これは命令だ!」
「……っ」
居住区を抜け、クオーレ地区への城門をぬけた所で、ついにシビレを切らしたバヤジットがシアンに命じた。
それまで早足に進んでいたシアンだが、仕方なく足を止める。
「命令であれば、止まりますが」
「…何か俺に話す事は無いのか?」
「ありません」
頑(かたく)なに態度を変えない。此方を見ようとしないシアンに、バヤジットが歩み寄る。
「俺はお前に聞くべき事がいくつかあるぞ…」
「そうでしょうね」
「自覚しているならお前から話せ。…何故話そうとしない?」
「……。話すコトができないからですよ」
「……!」
グッと切歯するバヤジット。
バヤジットは近衛隊の将官という立場である。そんな彼にとって、先ほど意図せず遭遇してしまった密会は──とても、危険なのだ。
「素直に話す気が無いのであればっ……仕方無い」
ガッ‥!!
「付いて来い」
彼はシアンの腕を掴んだ。
シアンはされるがまま。抵抗を諦めてバヤジットに連られて歩いた。
バヤジットは近衛隊の練兵所の隣り、司令部に向かう。
近衛隊の権威を象徴するこの建物は王宮にも並ぶ巨大な建築物だ。けれど実際はいっている機能としては、各師団の将官と副官に与えられた執務室や会合室など、あまり多くはない。
その中でバヤジットがシアンを引きずって来たのは、この建物の下層にひっそりと増設された──
冷たい石壁の牢獄だった。