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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第20章 冷たい手枷

ここは犯罪者を収監する場所ではなく、規律を破った兵士を閉じ込めるための懲罰部屋である。
最も手前の格子戸を開け…牢の中にシアンを押し込んだ。
「手荒になるがやむを得ない」
自らも中に入ったバヤジットが、シアンの身体を壁際に追い詰める。
後ずさったシアンの背が石壁にピタリと当たると同時──至近距離から見下ろすバヤジットが、彼の顎を持って上を向かせた。
「今から俺が問う事に答えろ。これも命令だ」
「もし命令に背けば…どうなりますか?」
「ここがどういう場所か考えろ。お前の態度次第では俺も何をするかわからんぞ…!!」
バヤジットが、シアンの顔を隠すターバンを乱暴に剥ぎ取った。
「先ずは、お前が何故あの場にいたのかを答えろ」
「……」
「かつて神殿があった地だ。祭壇の下に隠し階段があったな?あれは何だ」
「あれは──…地下通路への入り口です」
「地下通路だと?」
少し悩んだ後でシアンは答えた。どうせ明日、再び出向けばバレることだ。
「クオーレ地区には建国当時に作られた地下通路が今も残っているそうです」
「そんな物が王都の地下にあるのか…!? どこで知った?」
「……昔、貴族の客から仕入れた情報です」
「それは真実だろうな」
「ええ」
淡々と話すシアンの言動に、不自然さは無い。
しかしバヤジットは彼に対する疑心を拭えなかった。
「…それで、その地下通路で、お前とタラン侍従長は何をしていた?」
「……」
バヤジットの問い掛けに対して、一瞬の躊躇(ちゅうちょ)が。
その僅かな無言をバヤジットは許さず、掴んでいたシアンの顎を荒々しく振り払った。
項垂れたシアンは鉄の格子戸を横目に、言葉を選んで話す。
「僕は…ウッダ村で得た情報を確かめようとあの場へ赴きました…。クオーレ地区へ秘密裏に集められた平民がいるのなら…侵入経路はあそこしか有り得ないと」
「…っ…では何故タランまで一緒にいた?」
「タラン侍従長に後をつけられ、邪魔を受けただけです」
疑いをかけるバヤジットへ弁明する。
タラン侍従長があの場に来たのは確かに見込み違いである。ここに嘘は無かった。
しかし
「嘘、だな」
「…!?」
「シアン──お前、俺を欺こうとしているな?」

