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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第24章 明かされる正体
──…
「ここは迷路か…!」
シアンとタラン侍従長が密会していた神殿跡地で、隠し階段の先の扉を破壊し、バヤジットは地下道にはいっていた。
しかし、いくら先に進もうとも…
「くそ!また道が終わっている…!」
無数の分かれ道がバヤジットの行く手を阻むのである。
地下の調査を始めて、これで九日。
敵にバレないよう秘密裏に、少しずつ調査を進めるバヤジットだが、今日も収穫は無さそうだった。
“ まだこの通路は続くのか… ”
手に持つ灯りが消える前に、彼はまた調査を打ち切るほかなかった。
バヤジットが神殿の外に出た時、時刻はもう日没を過ぎていた。
今の季節、朝だろうが昼間だろうが太陽の光はほとんど地上に落ちてこない。そんなキサラジャは先日の嵐のせいもあってすっかり冷え込んでいる。
「あいつは──…まさか外で寝起きはしてないだろうな」
帰路に着いたバヤジットが呟いた。
あいつとはシアンのこと──。自邸の寝室に鍵をかけて監視していたのに、まんまと脱走されたきり、行方をくらませている。
だが先日、宿舎の食堂に入るシアンを見た兵士がいたというから
どうやら彼はまだこの地に留まっているようなのだ。
何故?
何の為に──?
『 死ぬ前に成すべき事は決めています 』
あいつの目的はいったい何だ?
何か手がかりを得られないものかと、シアンとの会話を思い起こすバヤジット。
けれど…彼の狙いはわからない。
何もわからないまま…バヤジットに話しかける時の、あの儚い表情ばかりが脳裏をよぎる。
そしてどういうわけか、シアンのあの顔を想うほどに、バヤジットの胸はえぐられるように苦しくなるのだ。
きっと、誰かに似ている──。
裏切られ、貶められ、いろんなものを諦めざるを得なかった、そんな顔でシアンが笑うからだ。
《 もう、いい 》
いつかのあの御方と同じ顔で──
《 僕は‥‥‥疲れたのだ 》
──…!
胸騒ぎがする。バヤジットが額に汗を滲ませて周囲を見渡す。
当然、バヤジットの心の内を読める者などいないのだから、こちらに注目する街人はいない。
「何処に隠れた…っ」
余裕の無い顔でクオーレ地区の門をくぐる将官を見て、門番が不思議がるだけだった。