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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第24章 明かされる正体
それからバヤジットは宿舎の食堂に来ていた。
ここでの目撃情報しか、今のところシアンに繋がる手がかりが無いからだ。
バタンッ!
気難しい上官であるバヤジットがいつも以上に目を鋭くして入ってきたものだから、怯んだ近衛兵等はバヤジットと顔を合わせないように俯く。
「おいお前!」
「はっ!な、なんでしょうかバヤジット様」
「人を探している。俺の部下──… 今はまだ槍兵師団の、シアンだ」
「シアン?って言うとあのクルバンですか。いや……最近は全く」
「そうか…っ」
手近なひとりに問い詰めても手がかりは無い。
そんな時──
見覚えのある顔を見つけ目を止めると、床に座ったその男がバヤジットの視線に気付いた。
「貴様…見覚えがある。確か槍兵師団の副官だな」
「 " 元 " 副官ですよ、バヤジット様」
部屋の隅に座るのは、かつて槍兵師団の副官だった男である。
しかし今はただの三等兵に降格している。
シアン達への淫行をバヤジットによって議会に報告されたのだ。クルバンをどうしたところで罪に問われたりはしないが…表向きはシアン達は近衛兵。騒ぎが大きくなり過ぎれば、議会も何かしらの処分を下すしかない。
「まったく…まだあのような汚れたネズミにご執心とはね」
「ネズミだと?」
かつては辛うじてあった上官の威厳すらも失くした男は、酒を手に部屋の隅にうずくまり、すっかり酔っているふうだった。
「ネズミを飼うのは楽しいですか?ああ…いやいや、飼い慣らすのに失敗して逃げ出されたところでしたなぁ、ハハハ!」
「…っ…貴様」
「あの生意気さではシツケもひと苦労でしょう」
「黙っていれば勝手なことを…!」
シアンを害獣のように言う男に、バヤジットは激怒する。相手の胸元を掴み、無理やり立たせていた。
「貴様のような者がシアンを侮辱するな!」
「…ッ」
その激しい剣幕に、男は酒で赤くなった顔を怯ませた。
「シアンはっ……あいつはな……!!」
「な、何をそれほどお怒りに?あの者はバヤジット様のなんだと言うのです?」
「…ッ…シアンは俺の部下だ!
俺は上官としてあいつの事を──…、……」
「……!?」
「……っ」
そこまで言って、バヤジットは言葉に詰まる。